聞こえないから上げる、をやめてみる。合奏の音量を整える【合奏を整える2】

記事のテーマを表すイメージです。実験・観測の記録写真ではありません。
ギターを上げたらベースも上がり、最後は歌が聞こえなくなる。音量の競争が始まると、演奏を合わせる耳も疲れてしまいます。大きな音を出すことと、必要な音が届くことを分け、練習室で試せる順番を作りましょう。
連載:一曲を、バンドの音にする。全5回 / 第2回
この回で試せること
音量・向き・距離・音数を分けて調整し、歌や合図が聞こえる状態を作れる。
つまみの数字を、バンドの音量だと思わない
アンプのつまみが3だから小さい、5だからちょうどよい、と機種をまたいで判断することはできません。楽器、アンプ、部屋、置き場所によって実際の音は変わります。同じ機材でも、スピーカーの正面と横では聞こえ方が違います。
まず、その部屋で何が聞こえていないかを確認します。自分の楽器なのか、ボーカルの言葉なのか、ドラムのハイハットなのか。必要な対象を決めないまま音量を上げると、ほかの人にも同じ行動をさせることになります。
「自分の位置ではギターの輪郭が分からない」と具体的に言えば、音量以外に向きや立ち位置も試せます。音が出ていない問題と、出ている音が自分に届かない問題を分けるのが出発点です。

全員が鳴らす前に、基準を作る
最初から全員が最大限に演奏するのではなく、小さな状態から順に加えます。生ドラムがある場合も、常に最大音量で叩く前提にせず、その曲と部屋に合う強さを相談します。歌がある曲では、言葉や入りの合図が分かるかを重要な基準にします。
ボーカルを無理に張り上げさせ、その上へ楽器を積むのは避けます。PAの操作が不明ならスタジオスタッフへ相談し、扱い方を確認します。練習のたびに違う配線やつまみを推測で動かすより、まず正しい接続と基本の設定を押さえます。
小さい音で成立したバランスを、そのまま必要な音量へ調整します。ただし演奏の強さが変わると音色やバランスも変わるので、単純にすべての数字を同じだけ増やせば完成とは限りません。曲の強い部分で再確認します。
耳に向ける工夫は、音を上げる前に
足元のアンプの近くに立っていると、自分には輪郭が届きにくく、向かいの人には強く聞こえることがあります。アンプの向きや立つ場所を変えるだけで、自分の音を判断しやすくなる場合があります。室内の全員が同じ音を聞いているとは限りません。
備え付け機材を傾けたり台に載せたりする場合は、安定性と施設のルールを確認します。無理な積み重ねはせず、スタッフに適切な置き方を相談します。目的は音を耳へ届かせることで、見た目の配置を整えることではありません。
一度に全員の場所を変えると、何が効いたか分からなくなります。まず一台の向き、次に一人の位置、とひとつずつ試し、同じ短い区間を演奏して比べます。前回の録音と同じく、比較条件をそろえる考え方が役立ちます。

ハウリングは、マイクの音が戻る輪
マイクが拾った音がスピーカーから出て、それをまたマイクが拾う。この繰り返しが強くなると、特定の音が持続するハウリングにつながります。歌が聞こえないからとゲインや音量を上げ続けると、この輪を強める場合があります。
マイクとスピーカーの位置関係、マイクの指向性、口からの距離を確認します。すべてのマイクに同じ置き方が合うわけではありません。指向性に応じた向きがあるので、機材の説明やスタッフの案内を基準にします。
ハウリングが出たら、まず該当する音量を下げて原因を確認します。鳴り続ける音の中で何度も上げ下げして限界を探ることを、初心者だけで行う必要はありません。高価な対策機材を買う前に、配置と基本設定を整えます。
大きいのではなく、音が重なりすぎているかも
ギター、キーボード、ベースが同じ高さの音を密に鳴らすと、一つずつではよい音でも、全体では輪郭が分かりにくくなります。ここで各自が音量を足すと、同じ場所の混み合いがさらに強くなります。音量だけの問題ではない可能性があります。
まず、ある楽器が少し休む、低い音を減らす、コードの押さえ方を変える、といった編曲上の工夫を試します。EQを大きく動かす前に、出している音そのものの役割を見直すのです。詳しい音の居場所は次回に扱います。
全員の音が常に同じくらい目立つことが、よいバランスとは限りません。歌を聴かせる場面、ギターのフレーズを聴かせる場面など、曲の中で主役は移ります。そのとき何を聞いてほしいかを共有します。
サビと静かな部分を、両方確認する
Aメロで歌が聞こえても、サビで全員の演奏が強くなると埋もれることがあります。逆にサビだけで音量を決めると、静かな部分で楽器が大きすぎる場合もあります。曲の強いところと弱いところを続けて演奏して確認します。
歪みやブースト、鍵盤の音色切り替えなどで音量が変わる場合は、その切り替えも含めます。家で一つずつ調整した音色が、合奏でも同じ存在感になるとは限りません。音量だけでなく、音の伸びや帯域の違いも関わります。
ここでも「サビだから全部上げる」と決めつけません。Aメロの音数や強さを減らしておけば、サビで無理に大音量にしなくても広がりを作れます。小さな場面を作ることは、盛り上がりを作る準備でもあります。
録音は便利。でも、部屋の全員の耳ではない
スマホを置いた場所の録音は、その位置でのバランスを記録します。自動の音量調整やマイクの特性によって、実際にその場で感じた音と違う場合もあります。録音だけを絶対の審判にせず、メンバーの聞こえ方と照らし合わせます。
たとえば録音でギターが大きすぎるなら、機材のすぐ前へ置いていなかったかも確認します。置き場所を決めたら、変更前後で同じ位置に保ちます。演奏の変化と録音位置の変化を混ぜないようにします。
「歌詞が分かるか」「キックとベースの始まりが分かるか」のような具体的な質問で聞き直します。録音がきれいかどうかと、練習の課題が分かるかどうかも別です。まずは後者に役立つ記録を作りましょう。
次の練習で試す、一つずつの調整
今日の課題を「全員が歌の入りを聞ける」にして、短い区間を小さめに演奏します。聞こえない人がいれば、まずその人の位置と周囲の音を確認し、向き・音量・音数のどれか一つだけ変えます。全員が同時に操作しないことが、原因を知るコツです。
演奏を止めた間は、機材の話をしている人の言葉も聞けるよう、不要な音出しを止めます。音を止める時間まで含めて合奏の準備です。話し合いのたびに誰かが弾き続けると、相談のためにさらに声を張り上げることになります。
最後に、うまく聞こえた配置と変更した点を写真や短いメモで残します。スタジオが変われば調整し直しますが、前回の理由が分かれば出発点にできます。つまみの数字より、なぜその状態にしたかを記録しましょう。
練習前に、少し考えてみる
聞き手ここが気になる
自分のギターが聞こえません。ボリュームを上げる前に、何を二つ確かめますか。
案内役考え方のヒント
アンプの向きや自分の立ち位置と、ほかの楽器との音域・音数の重なりを確かめます。歌や合図が全員に聞こえるかも、調整後に確認します。
出典と、この練習へのつなぎ方
Shure「How to Control Feedback in a Sound System」(参照内容の要約)
マイクとスピーカーのフィードバックの仕組み、配置とゲインの基本を参照しています。本文の練習手順は、バンド内で一つずつ条件を比較するための当サイトの実践案です。
Yamaha・Steve La Cerra「Live Recording, Part 1」(参照内容の要約)
部屋とマイク位置で録音のバランスが変わる点を参照しています。特定機種の購入を前提とせず、手元の録音の限界を理解するために使っています。
出典確認日:2026年10月26日。練習例・図解は当サイト独自の構成です。編成・曲・経験・利用施設に合わせて調整してください。
SERIES GUIDE · 全5回
一曲を、バンドの音にする。全5回
現在:第2回。続きも、気になった回の振り返りも、ここから。

02 いま読んでいる回
聞こえないから上げる、をやめてみる。合奏の音量を整える

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04 第4回

05 第5回

