【後半】歌が上手くなるには? ガチのボイストレーナーに聞いてみた!
前半の記事では、歌が上手くなるために必要なことについて、プロの目線から解説していただきました。
そんな中で出てきた「ボイトレ」のこと。
ボイトレや歌のレッスンっていったい何をするの? よいボイトレ講師と出会うには? といった疑問について、引き続きプロボーカリストの小田原友洋さん(以下ODYさん)にお伺いしました!
今回お話を伺ったお方:小田原 ODY 友洋 氏
音楽専門学校中退後、3つのバンド(マダム・キラー/ラピスラズリ(ガウスエンタテインメントよりリリース)/the baked Potato)を経てソロに転向。ソロ転向後、アーティストの後ろでコーラスをする事に興味を持ち2003年中川敦教のライブコーラスを皮切りにバックコーラスとしてミュージシャン業をスタート。
数々のアーティストのバックコーラスとしてコンサート、ライブに出演。FNS歌謡祭、Music Fair、NHKうたコンなどの音楽番組にも多数出演。2016年よりbankbandにコーラスとして正式に加入。
制作でもコーラスやボーカルディレクター、歌唱指導などで多くのアーティストをサポート。作曲家としても今まで嵐、KinKiKids、chemistryなどへ楽曲提供。
近年は、「長年に渡って歌っていくための発声法」についてフレデリック・フースラーの発声の考え方を元に、自らがサンプルとなり再現性の高いことだけをまとめている。その内容をプロアマ問わず沢山の方に知ってもらうために、トレーナーとしても活動中。
今までの共演・参加アーティスト
サザンオールスターズ / 桑田佳祐 / bankband / EXILE / 3代目J SOUL BROTHERS / D-LITE from BIGBANG / SE7EN / 畠中祐 / 奥田圭悟 / 水樹奈々 / SMAP / ジャニーズWEST / 山下智久 / Kis-My-Ft2 / KinKiKids / V6 / 堂本剛 / ENDLICHERI☆ENDLICHERI / Chemistry / スガシカオ / 岡村靖幸 / 和田アキ子 / 高橋真梨子 / 広瀬香美 / 鈴木雅之 / 加山雄三 / 石井竜也 / 山崎まさよし / など他 多数
ボイトレとは何ぞや?
——前回、ODYさんから「メロディとリズムが大事」という話を伺いました。ボイトレやボーカルレッスンというのは、そういった音程の取り方やリズムについて学ぶようなイメージなのでしょうか?
小田原友洋氏(以下ODY氏):音程やリズムも含め、基本的にはその人の課題に応じて必要なことを教えてもらえるとは思いますが…教室や講師の考え方、教える側のスキル次第のところもあるかと思います。
僕個人のとらえ方の話なのですが、歌の指導に関しては「ボイストレーニング」と「ボーカルトレーニング」という、大きな2つの軸に分けて考えています。教室や講師によって、何をどのように教えるかが変わってくるのではないでしょうか。
「ボイストレーニング」と「ボーカルトレーニング」の違い
ODY氏:先にボーカルトレーニングについて簡単に説明すると、いわゆる「歌い方そのもの」に当たるトレーニングです。音程やリズムはもちろん、その曲をどのように表現していくか、そのための技術を学んでいくイメージですね。
それに対して、ボイストレーニングは「歌ううえで必要な声の出し方」について学びます。
声が出れば歌は歌うことができます。ですが、歌うときの声と喋るときの声は、出るところは一緒でも出し方がちょっと違うんです。いかに喉という楽器を効率よく共鳴させられるか! こういったところをボイストレーニングで学びます。楽器のひとつとして歌を奏でるために必要な「声の出し方」を学ぶイメージですね。
僕がレッスンをする際には、このような区分けをベースにして考えいます。ほかの教室や講師の方は分からないですが…(笑)。
ミックスボイスや鼻腔共鳴ってよく言われるけれど…
——「歌うときの声の出し方が違う」というところ、少し詳しくお伺いしたいです! それは、いわゆるボイトレの解説サイトなどでもよく言われている「ミックスボイス」や「鼻腔共鳴」などのことを指すのでしょうか?
ODY氏:うーん、ある意味では…僕は「ミックスボイス」という言い方はしていなくて、あくまでも「芯のある裏声」という認識をしています。鼻腔共鳴についても、実は鼻腔はほとんど共鳴していない、声の響きに影響を与えていないということが論文で発表されていたりもします。でも、ミックスボイスや鼻腔共鳴といった言葉は今、ボイトレ界隈で非常にメジャーに使われていますね。
——そうですね、ミックスボイスや鼻腔共鳴という言葉はものすごくよく聞きます! が、ODYさんは使われていないということですよね…ちょっと、急に混乱してきました…!
ODY氏:歌を学ぶ中で出てくる用語については定義次第なところもありますし、歌の技術を伝えていく中で生み出されていく、「例え話」に近い概念もあったりします。「声が出る」という現象は自分の目で見ることができない、身体の中で起きていることですからね。
「腹式呼吸」なんかもそうです。「お腹に息を入れて!」みたいに言う人もいますが、そもそもお腹に息は入りません(笑)。講師達が「どう表現すればその感覚が上手く生徒に伝わるか」を模索した結果が、そういった言葉のチョイスに現れている気がします。
となると、自分にとって分かりやすく説明してくれる講師に出会えることも、上手く歌えるようになる秘訣として重要なポイントになってきますね!
——なかなか深い話ですね…! 身体の中で起きていることだからこそ、講師の方々はいろいろな言葉で歌い方を伝えようとしていて、そのひとつの表現が「ミックスボイス」や「鼻腔共鳴」であるということなのですね。では、ODYさんの考えるボイストレーニング、「歌うための声の出し方」について、もう少し具体的にお伺いしてもよろしいでしょうか?
発声とは、運動神経である!
ODY氏:声は、息が声帯を通ることで聞こえる状態になります。歌うときには、声帯を閉じた状態で息を通した方が、よく響くいい声になるんです。口笛や歯笛も同じ原理で、息の出口をぐっと細くするといい音で鳴りますよね。歌うときにも、その状態を声帯で作ってあげることが必要です。
じゃあ、声帯を閉じるにはどうしたらいいか。それには喉の筋肉の使い方が関係してきます。その「喉の筋肉の使い方」を学ぶことがいわゆるボイトレ、ボイストレーニングだと考えています。まさに歌うための基礎トレーニング、「発声は運動神経」です!
——発声は運動神経!! 新鮮な解釈ですね…! となると、歌を習いたいと考えた場合、まずはボイストレーニングを受けるのがよいのでしょうか?
よい教室・講師に出会うためには、まず自分の課題を考えてみよう!
ODY氏:ボイストレーニングは確かに、歌ううえで非常に大事な基礎力です。ですが、もっと大事にしてほしいのは「そもそも自分が求めていることの答えが、その教室で得られるのかどうか」です。
たとえば、歌の音程やリズムを理解するところに不安のある人であれば、それを教えてくれる講師がいるとよいですよね。「音程やリズムについては自分で拾えるので、よりよい声、よりよい響きで歌いたい」という人であれば、ボイストレーニングを中心に受ける方がいいですよね。もちろん、両方いっぺんに身につけたい! というケースもあります。
このように、「歌が上手くなりたい」とひとくちに言っても、何を課題と感じているかは人それぞれです。
ODY氏:声の出し方だけを一生懸命練習しても、そもそも音程やリズムが曖昧なままでは歌になりません。逆に、音程やリズムが正確であれば100%いい歌になるかというとそういうわけでもありません。
まずは自分が今、歌ううえで何に課題を感じているのかを考えてみること。音程なのか、リズムなのか、声の出し方なのか。あるいは、「細かいことはわからないけれど、とにかくこの1曲をしっかりバッチリ歌えるようになりたい」でもOKです。
自分の課題を整理したうえで、実際に講師がいるところへ足を運び、講師に投げかけてみる。それに講師がどう答えてくれるか、そこで自分の知りたいことを学んでいけるかを検討するのがいいと思います。
「歌のお医者さん」としてボイストレーナーを活用してほしい!
ODY氏:僕たちボイトレ講師は、たくさんの知識を元に生徒さんにアドバイスをすることはできますが、そのアドバイスを実際に実践するのは生徒さんご自身です。となると、そもそも本人が課題を自覚していないと、なかなかモチベーションが続かないんですね。
この関係って、お医者さんと患者さんの立ち位置にも似ている気がします。「医者に行けば病気が治る」のではなく、「医者の知見を元に必要な治療方針を決め、それに医者・患者がともに取り組んで快方へ向かう」んです。
僕は、「自分の課題を解決したい」と思っているすべてのボーカルに、少しでもステップアップのお手伝いができればと考えています。自分の中で感じている課題や「こう歌いたい」というイメージが掴めたら、ぜひ僕たちボイトレ講師にご相談いただければと思います!
——ODYさん、たくさんのお話をありがとうございました!
今回お話をお伺いしたODYさんですが、現在、ボーカルトレーニング教室の受講生を募集中とのことです。ご興味のある方はぜひ一度、オフィシャルサイトの「CONTACT」よりお問い合わせください!